ドラコの資産運用 織田俊夫

政治、経済、社会、を常識眼で分析すれば資産は10倍になる

アントワープのダイヤモンド

 私が欧州に駐在していた時に一つ楽しい仕事があった。

 私は機械担当だったが海外駐在になると他の仕事もやることになる。

 他の部門がアントワープにダイヤモンドの研磨会社を持っていた。そのダイヤモンドの在庫を年に二回棚卸をするのだ。

 アントワープはダイヤモンド研磨で有名だ。その産業のほとんどはユダヤ資本で行われている。

 ダイヤモンド通りとでも言うその通りは宝石商と研磨会社が軒を並べている。

 街には一見してユダヤ人とみられるビジネスマンがあちこちに歩いている。黒い帽子に伸ばしたひげ、そしてタキシードのような黒い洋服、といういでたちだ。そして黒いカバンにはチェーンがついていて腰に結び付けられている。中にはダイヤモンドや現金などのが入っているので盗まれないためだ。

 ビルの一階は高級なデザインでできた店になっていて、二階以上は事務所と研磨工場になっていた。

 羊羹のような形の箱に2,30個の小さな紙袋やビニール袋に1,2個ずつダイヤモンドが入っている。

 箱ひとつでおよそ1億円だ。毎回4箱の在庫をチェックしていたので4億円になる。

 ダイヤモンドは4Cといってカラット(重量)、カラー(色)、カット(デザイン)、クリアネス(透明度)で価値が決まる。

 素人の私にはカラーやカットは分からないので結局数とおおよその大きさだけを見て在庫チェックしたこととしていた。

 教えてもらったのは薄い青色は値段が高く、黄色は安いということだ。同じ大きさでも色の違いで値段が100倍以上違ってくる。

 在庫票と現物を確認して仕事は2時間ほどで終わる。

 その後食事に連れて行ってくれて、美味しい料理とワインを頂いて帰るという、本当に楽で楽しい仕事だった。

 食事の時に現地で働いている日本人が教えてくれた。

 黄色のダイヤは大きくても1万円しない、これを1万円ぐらいの金が含まれた台座に載せれば黄色がごまかせる。そんなのを何個も作らせて日本に持って帰って銀座のお姉さんたちに配る中小企業おじさんたちがたくさんいる。

 駐在期間が終わり日本に戻るころには日本のバブルははじけていた。

 残念だが銀座のお姉さんに黄色の台座付黄色いダイヤを持って帰ることはなかった。

2022年5月17日