ドラコの資産運用 織田俊夫

政治、経済、社会、を常識眼で分析すれば資産は10倍になる

ウクライナのキエフ(キーフ)空港

 あれは1994,5年だったかと思う。

 1989年東西冷戦の壁が壊れ、その後ソビエト連邦は崩壊し、ウクライナは独立国家となった。

 ウクライナを始めとしてソビエト連邦から独立した国々に日本政府は援助資金を出した。

 日本の商社はそのお金を使ってのプロジェクトを追っていた。

 私もその一人でキーフ(当時のキエフ)には何度も出張に行っていた。

 ソビエト連邦から独立したと言ってもまだまだ共産主義体制はそのままで、ホテルの各階には監視役の叔母さんが座っているし、秘密警察はホテルの部屋を盗聴したり、日本人駐在にはハニトラを仕掛けたりしていた。

 どこの空港のビルも暗い感じで共産主義国特有の木目調のデザインだった。

 もちろん空港サービスも共産主義らしく最低だった。

 入国手続きは長蛇の列で入国できるまでに1時間以上待たないといけないのは普通だった。もちろん係官は仏頂面でやっている。

 だが共産主義国には裏の道がある。

 空港係官たちが経営している会社にウクライナ出張する前に連絡して1万円程度の手数料を支払うことを確約する。

 飛行機が到着したゲートで女性が待っている。

 女性に連れられて入国手続きの長い列の横を歩いていくと扉がある。その向こう側には大きめの部屋にいくつかのソファーがあってそこで待つことになる。

 女性にパスポートを預けるとコーヒーなどの飲み物のサービスがある、料金込みだ。そして10分もするとパスポートが戻ってきて入国スタンプが押されて処理は終わっている。

 忙しければパスポートを受け取ったらそのまま入って来たのと反対側のドアを開けば空港の外となっている。暇ならばもう一杯ビールでも飲んでいればいい。

 受け取ったパスポートには入国印が押されたうえにこのサービス料金に対して「空港使用料」という名目の1万円の領収書が挟んである。出張精算に堂々と使える。

 当時5万円支払うと他の乗客に先んじて飛行機を降りることが出来て、飛行機に横付けされたリムジンカーでもう一段階上の応接室に運んでくれたらしい。

 5万円がもったいないのでそのサービスは使わなかった。

 おそらく空港職員たちが作った組織で、ほとんど非合法なことをやっていたに違いない。

 似たようなサービスはほかの国でもあったが、だいたいにおいて汚職が多い国でかようなサービスがあったと思う。利用していて批判するのはおかしいのだが。

2022年5月27日