昔むかし有能な馬主がいました。
たまたま買った最初の一頭目の馬がレースで優勝したのです。名前はケータイ号です。国で指折りの有名な馬になりました。
馬主は二頭目の馬を買いました。これもレースで優勝したのです。名前はアリババ号です。
馬主は大金持ちになり有名人となりました。
馬主は俺はできる男だと思い三頭目、四頭目を買いました。馬主の目利きを信じた人々は次々にお金を馬主に預けました。
馬主は優勝した二頭が稼いだお金と人々から集めたお金をもとに400頭もの若い馬を買いました。
そのうち少なくとも半分は優勝して世界一の大金持ちになるにちがいないと馬主は思いました。馬主に金を貸した人々も立て続けて二頭もの馬を優勝させる馬主を信じて自分たちも金持ちになれると思っていました。
馬主は400頭の若い馬を持っていることを自慢し、世間の人々を羨ませがらせました。
馬主の目利きを信じて馬を譲って欲しい人が増え、まだレースで一度も勝ったことがない馬を馬主が買った値段よりも高値で買いたいという人が増えました。
その結果400頭は買った時の何百倍という法外な値段が世間から付けられました。でも1頭もレースで優勝していないのです。
毎年世間の付ける値段が上がるので馬主は毎年金持ちになった、利益が出ていると言いふらし、多くの人がそれを信じました。
400頭に最初に優勝した2頭を加えると馬主はとんでもない金持ちになりました。
ところが3頭目は優勝できません。確かウイワーク号と言う名前だったかもしれません。
その後4頭目アーム号、5頭目もう名前は忘れました、とレースには出ますがいつまでたっても優勝してくれません。
お金を出していた人の一人が馬主に、
「もしかして400頭はどれも優勝できないのでは?」と
お金を返してくれといいました。
馬主は
「半分の200頭とは言わないけど1割の40頭ぐらいは優勝するよ、君は後悔するかもよ」と答えながら
お金を返しました。
さらにお金を返してくれという人が増えていきました。馬主は返すお金のために2番目に優勝したアリババ号を手放してお金を工面することにしました。
「40頭とは言わないけど4,5頭は優勝するよ」とだいぶん弱気に答えてお金を返しました。
その後400頭の中から優勝する馬は出てきていません。
馬主が最初に買った2頭続けて優勝したのは馬主が実力があったわけでもなく目利きが良かったわけでもなく運が良かっただけ、400頭は駄馬ばかりだと陰口をたたかれるようになりました。
もし400頭が1頭も優勝できないとすると世間から法外な値段が付けられていた400頭の価値はゼロとなります。
つまり馬主が金持ちだったと言うのは幻想にすぎなかったとになります。2頭目のアリババ号はすでに売っているので、馬主に残るのは資産が1頭目のケータイ号だけ夫妻が人々から借り入れた法外な借金ということになります。
馬主を信じて多額のお金を払った人々のお金は返ってくるのでしょうか。
2022年8月20日