この映画の批評みると3時間は長すぎるというコメントがよくある。確かに長いのだが、先のブログの通り真面目な男が小悪魔的な女性に振り回されるというストーリーだがやっぱりよくできている。
読んだ数々の批評には書いていないことなのだが、この映画ヨーロッパの国民性や地域性を表していているように思う。
夫ヤコブは背が高くて青い目をしていて典型的なオランダ人だ。
同じヨーロッパ人でもドイツ人は大きくてポルトガル人は小さい。オランダ人は特に大きくてドイツ人より大きくヨーロッパで一番大きい。
オランダ人の生活は質素だ。体は大きいのに家は小さい。
ヤコブが妻の浮気相手かもしれないデダンを相手に「お前はどうやって生計を立てているのか」と何度も聞くのに対してデダンは何もやっていないと答える。
オランダ人はプロテスタントが多く、もともとプロテスタントは働くことっことを良しとする商売人の宗教だったので働き者が多いとされている。
フランス人妻リディ―が夜な夜な遊び惚けているのにたして真面目に船長をやっているオランダ人の夫ヤコブとの対比が面白い。
夫ヤコブが妻に嫌気がさして浮気をしようとする少女のような女性はドイツ人(スイス系ドイツ人?)と言う設定だ。リディ―と離婚して若い彼女と結婚してたら平凡ではあるが苦しむようなことは無かったろう。だが男はそういうわけにはいかないということなのだ。
新しい職を求めて面接をするときにオランダ人の面接官が「君はフラマンではないんだね」と言って意気投合する。
オランダの南に隣接するベルギー北半分はオランダ語を話すフラマン人が住んでいる。オランダに住むオランダ語を話すオランダ人とベルギーに住むオランダ語を話すフラマン人がいる。
違いはオランダ人はプロテスタント、フラマン人はカトリックが多い。オランダ人二人が俺たちはフラマンではないと言って意気投合していた訳だ。東京で関西人である京都人二人がお互いに大阪人ではなかったと言って意気投合しているのと同じようなものかもしれない。
イタリア人のヤコブの友人のコードーは訳の分からない仕事に加えて麻薬にも関係がある、でも最後は成功しているところが面白い。
ヨーロッパの古い話には必ず出てくる教会が全く出てこないことを考えると、原作の作家はユダヤ人だったのだろうか。
夫ヤコブの名前を調べたらユダヤ教の経典、旧約聖書に出てくる人物でヘブライ語で「人を出し抜く」と言う意味らしい。実直で妻に翻弄される夫に皮肉の意味で付けた名前なのかもしれない。
2022年8月20日
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