アフリカ赤道直下でコリオリの実験を見せてくれるおじさんがいた。
ケニアの首都ナイロビから北にサバンナを通る国道を行くと赤道になる。
もちろん赤道と言っても地図や地球儀にあるような線が引かれている訳ではない。ケニアに普通にあるバラックの家が国道沿いに2軒あるだけだ。
「コリオリの実験」という手書ペンキの看板があって国道の横におじさんが前にバケツを二個置いて立っている。
水が入った一個のバケツからもう一つのバケツに水を注ぐ。水を注がれるバケツの底には穴が開いていてその穴から水がトイレの水洗のように出ていく。水を注いで空になったバケツを下において漏れ出てくる水を受け取る。
中にマッチ棒を入れると水に浮かんでくるくると回っていく。
そんな実験だ。
コリオリの法則とは少々長いが以下の通りだ。
地球の自転の影響で風や水は北半球では右にぞれ南半球では左にそれる。
赤道辺りは地球の自転軸から遠く北極の近くは自転軸から近い。赤道辺りの物体は北極近くの回転より速いスピードで回り東に進んでいる。なので南から北に移動する物体は右(東)に曲がってしまうと言いうものだ。
その結果北半球ではトイレやふろの水は左周り(水が右方向に曲がるので)となり南半球では右回り(水が左方向に曲がる)になる。
分からない方はインターネットで調べていただきたい。私も分かるまでにけっこう時間がかかった。
赤道であることを示す碑もなく、土産物屋などもちろんない。おじさんはただのサバンナにある国道の地面を指さしてここが赤道だと言う。
おじさんはバケツにマッチを入れてここはまだ南半球だと言ってバケツの水に浮いたマッチが右周りになることを我々に見せた。
そのあと二メートルほど国道に沿って北に移動して同じバケツで水を入れマッチを浮かべる。おじさんはマッチが水の中をぐるぐる回っているのを見せて「ほらほらここは北半球だからマッチは左周りになってるでしょ」と言う。
あれは本当だったのだろうか。ただの手品で騙されたのだろうか。数ドル払ったのでウソだったら悔しい。
その後シンガポール、ジャカルタ、メルボルン、ヨハネスブルグなどなど南半球に行ったがトイレの水が右回りで流れていくのを確認するのを忘れていた。
2022年6月6日