エッフェル氏がアルザス出身ということで「最後の授業」を思い出した。
昔日本の教科書に載っていたので年配の人はこの話を知っている。
だがある理由で教科書から削除された。
アルザス地方のフランツ少年はフランス語の授業が苦手だったが、その日はフランス語の最後の授業だった。
1871年フランスは普仏戦争に敗れてアルザスロレーヌ地方をドイツに割譲することとになった。先生は今日がフランス語の最後の授業になると言ってフランス万歳と言って授業を締めくくる。
こどものころこれからフランツ少年は慣れないドイツ語の勉強をしないといけなくてかわいそうだなと思っていた。
だが事実は違う。それが原因で日本の教科書から消えたらしい。私は大人になってアルザスに行って初めて知った。
アルザス地方はもともとアルザス語を話していてこの言葉はなんとドイツ語の方言のひとつなのだ。
つまりフランツ少年は日々ドイツ語を話していて、クラスのほとんどのこどももドイツ語が母国語なのだ。
フランス語の先生はドイツ語が母国語であるこどもたちに慣れないフランス語を学ばせようとしていた訳でフランツ少年がフランス語が苦手だったのも当然のことだ。
さて同じようなことがウクライナでも起こっている。
ロシアに占領されたクリミアを含む5州でロシア語教育が進められている。
先日日本のメディアがが住民の言葉を奪う行為であり洗脳になると非難していた。
だがそれは「最後の授業」のフランツ少年を哀れに思いフランス語の授業をさせないドイツを理不尽に思った私の昔の誤解と同じだ。
世界の多くの人が「最後の授業」を間違って解釈しているようにウクライナのロシアによるロシア語教育についても理解が間違っている。
占領された5州はウクライナ政府の調査でもロシア語を母国語とする人々が7割~9割いる。いままでウクライナはこれらの地域でロシア語教育を止め公共施設ではウクライナ語のみとしウクライナ語を強要てきた。
今回のロシア語での教育が始まったことで住民たちの多くはフランツ少年やそのクラスメートのように母国語で教育を受けられることに安堵しているはずだ。
かようなことを言うとまたお前はロシアの手先かと言われてしまいそうだがこれは事実だ。
さてアルザスは第一世界大戦後フランス領に戻っている。
住民は今もアルザス語を話しているが、学校教育でフランス語も勉強するので英語も加えてトリリンガル(3か国語話す)の人がほとんどだ。他のフランスとはちょっと違うゲルマン風の街並みがあって住民は言葉が得意なので観光地として成功している。
アルザスのような平和がウクライナに一日も早く来ることを心から望む。
2023年3月6日