ドラコの資産運用 織田俊夫

政治、経済、社会、を常識眼で分析すれば資産は10倍になる

「ラストエンペラー習近平」エドワード・ルトワックを読んで

 エドワード・ルトワックは今日本で流行の地政学の大家だ。

 私の理解では地政学とは名の通り地理学と政治学をミックスした学問だ。

 日本には地理学と政治学の学者はいるが地政学の学者はおらず日本の大学で地政学を教えているところはない。戦後アメリカ軍が日本人に地政学を学さないようにしたと聞いたことがある。

 ルトワックは本書で中国の過去の対外政策を4段階に分けている。

 チャイナ1.0は1970年代後半から始まった鄧小平の改革開放路線だ。海洋法条約、金融取引の取り決めなど世界標準に合わせ平和外交を進め外資の導入を進めた。

 チャイナ2.0は2008年リーマンショックに始まる。世界不況の中で中国は莫大な政府支出で世界で最初に不況から脱出した。その自信がおごりとなり日本、フィリピン、マレーシア、ベトナムなどに領土紛争を起こす対外強弁路線を取った。だが強弁路線に対して日本は尖閣列島の領有問題は存在しないと実質無視し、失敗に終わった。

 チャイナ3.0は中国はチャイナ2.0を反省し、フィリピンなど抵抗が少ない国だけに強弁政策を取った。一方でアメリカと太平洋を二分する案を提案したが無視された。

 チャイナ4,0は中国が諸外国に比べて早く立ち直った(と勘違い)ことから始まる。再び自信が過ぎておごった中国は全方位強弁路線に戻った。オーストラリアのコロナ批判、香港批判に対してワインなどの輸入制限をし、ベトナムの漁船を沈没させたりしている。チャイナ4.0はチャイナ2.0の復活でありより見境のない”劣化”したものだ。

 中国はリーマンショックの不況対策やコロナ対策の成功で自信過剰になった。だがその強硬な態度に周辺の中小諸国は対抗し連合したため中国は孤立化している。ルトワックは大国が圧力をかけると小国は連合したり別の大国と同盟するので「大国は小国に勝てない」としている。

 本来中国が進むべきなのは平和的に成長していくチャイナ1.0が良いのだが、習近平はそれができない。それは習近平の生い立ちや毛沢東を尊敬するなどの思想が原因だとしている。

 そして強弁外交を続ける中国は破綻するとしている。

 ルトワックの名前をどのくらいの日本の政治家は知っているのだろうか心配だ。

2023年9月12日