ドラコの資産運用 織田俊夫

政治、経済、社会、を常識眼で分析すれば資産は10倍になる

ヨーロッパと言えばドイツのビアホールでの第九

 20年前欧州には年間10回以上出張していた。

 当時私は転職をしてメーカーの営業の責任者をしていたのだが、技術者の欧州出張の同行も私の仕事だった。

 その時私は3つ年上の設計の先輩とともにドイツのシュツットガルトに出張していた。3日ほどで仕事は終わった。ドイツならばビールだということでホテルで聞いたビアホールに二人で行った。

 何せその設計の先輩は典型的な技術者だった。彼は物静かで真面目で出来ないことはできないとはっきり言う人だった。英語はほとんどできなかったので私が通訳していたし、海外出張も2,3回目でドイツは初めての出張だったので当然営業の私が案内していた。

 二人でビアホールに入るとだだっ広い。大勢のドイツ人たちが大きなジョッキのビールを片手に酒の肴はソーセージやジャガイモと言った感じで飲んでいる。

 テーブルに案内されて同じようにジョッキのビールとつまみを頼んだ。

 がやがやと騒然としていたのだが暫くすると歌声が聞こえてくる。あるテーブルでドイツ語の歌を歌い出した。次々とビアホールの人達は一緒になって歌い出す。

 その曲が終わると次は別のドイツ人たちが歌いだして、またみんなで歌いだしてビアホールが一体となった合唱になる。

 次から次へのみんなビールを片手につばきを飛ばしながら合唱する。

 少々えらいところにきたものだと思っていたら、悪い予感は的中。

「君ら日本人か?日本の歌を歌ってくれ!」ということになった。

 次から次へと「ヤパン(日本)!ヤパン(日本)!」とコールが盛り上がる。

 私の頭は真っ白、なにせ音楽などやったことないし、カラオケで歌うぐらいで歌詞は覚えていない、ましてドイツ人に受けるような曲を歌うことなどできない。

 でもドイツ人たちは許してくれそうにない、本当に困った。

 その時同行していた設計の彼が突然、

「僕がやります」と立ってビアホールの真ん中に出て行った。

 ざわついていたビアホールが一瞬静かになった。

 そして彼は緊張しながら歌い出した。

 やりだしたのが第九、ベートーベンの第九だ。もちろんドイツ語で、しかも伴奏なしのアカペラだ。

 ビアホールのドイツ人たちは最初あっけに取られていたが手拍子になり一緒に歌いだすものありでやんやの大喝采となった。

 後で聞いたところ大学時代コーラス部に所属していたらしい。

 芸は身を助けるとはよく言ったものだ。

2022年8月31日